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ブルが起きたとき、冷静に原因を究明しそれを除去して再発を防ごうとするよりは、とかく感情的な世間の反応を気にしてできるだけ波風たてずに穏便に片づけようとしがちです。そして責任者が、「世間をお騒がせした」という理由でさっさと詫び、辞任すると、肝心の問題解明が行われなくても、世間も溜飲を下げ、一件落着。あとは忘却の彼方に去るのを静かに待つのみ。「すみません」といえば、すんでしまうシステムです。
結局は、理性的にクールに対処することはせず、世間の皆さんのホットな感情を治めることが至上命令となり、たいていは、本質的解決はせず、その場限りのとり繕いで終わってしまいます。
時間をかけても理性的・論理的にものごとを整理して考えようとすると、「屁理屈だ。口先ばかりだ」とか、「それは理想論で、現実はそんなものじゃない」と、切り捨ててしまったりしますが、それでは、結局のところ知的貧困に陥り、しまいには感情にふりまわされ、熱血だの汗と涙だのといった、力まかせの“解決”策に身をゆだねる結果を招いてしまいます。
犬養毅首相が暴漢に襲われたとき、「話せばわかる」といったのは有名なエピソードです。このひと言は重く、「冷静に、論理的・理性的に話しあえば、きっと相互理解への道が開ける」という知性、すなわちMINDを尊重したアプローチへの命がけの宣言となっています。しかし、その理想は、“問答無用”と暴力にものをいわせたホットな直情型行動主義に吹き飛ばされてしまいました。そしてそれに続くこの国の歴史は、残念ながら暴漢の行動主義に味方するかのように無謀な戦争へまっしぐら。結局、“話せばわかる”知性の道を信じて選択することはしませんでした。
その反省から出発したはずの現代日本。教育制度は“世界でも

 

 

 

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